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水質の指標シリーズ―大腸菌、一般細菌

はじめに

水質の評価には、汚れ具合を評価する指標、においの原因物質や汚染物質の量を測る指 標、菌の指標など、数多くの指標があります。このシリーズでは水質を分析するための指標についてご紹介して参ります。 大腸菌、一般細菌の数値 飲料水における一般細菌数は1ml 中に 100 個以下と定められています。この根拠は、コロニーを形成する菌数が 100 個以下の水によってコレラや腸チフスなどの感染症が発症しないことが理由とされているようです。加えて大腸菌群数も規定されており、100 ml の水を用いて検出されないこととされています。大腸菌は人や動物の糞便由来であり、河川水や地下水などを処理することによって水道水として供給される飲用水中に大腸菌が排除されていることは、人の糞便由来の腸管系感染症を予防する観点から保証されるべき項 目として規定されています。


菌の分析法

菌には、偏性好気性菌、微好気性菌、通性嫌気性菌、偏性嫌気性菌など、酸素がないと生 育できない菌、低濃度の酸素で生育できる菌、酸素がなくても生育できるが酸素があった方が生育しやすい菌、酸素があると死滅する菌があります。培地にコロニーを形成させて 生菌数としてカウントするため、培養しやすい菌や培養しにくい菌があり、このため、一般細菌数は、すべての生菌数を表示しているわけではありません。分析技術とスピードを 考慮した上で、最も妥当な方法として確立した分析方法であるといえます。また、生菌からの ATP(アデノシン三リン酸)をルシフェリン―ルシフェラーゼ発光を利用して検出する方法があり、オンサイトでの分析に用いられています。菌の種類に関係なく検出するため、汚れ具合の評価として用いられる場合もあります。


水の殺菌処理

水道水は塩素処理が行われており、残留塩素濃度として蛇口からの水道水中に 0.1 ppm(1 リットル中に 0.1 mg の残留塩素を含む)以上の濃度であることとされています。ただ、取水場所によって水道水の残留塩素濃度は異なり、地下水では0.2 ppm 程度、河川 水やダムなどの貯留水では0.4 ppm 程度になっているようです。一般細菌数が多いと、 塩素処理があまり機能していない可能性があり、病原菌への感染リスクが高くなると考えられます。夏場には一般細菌数が増える傾向が見られます。また、塩素処理等されていない井戸水などでは、大腸菌が検出されることがあります。


クリプトスポリジウム感染について

一方、塩素系殺菌に耐性のある微生物、クリプトスポリジウムによる水道水を原因とする感染の発生を受けて、対策が取られているようですが、発生が一過性であったり、予測が つきにくかったりなど、常時観測することの難しさがあるようです。浄水施設の整備や、 取水場所の変更などが指針として示されています。詳細については下記サイトをご覧ください。


数値の意味

飲料水としての試験については、基準値として一般細菌の生菌数が 1 ml あたり 100 個以下であることとされていますが、規定されている培養条件で生育しない菌の存在を否定するデータでないことと、あくまでも飲料水試験として求められている項目であることを理解していただければ幸いです。この数値を持って処理の効果や安全性を保障するものでは ありません。

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