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「酵素の仕事」シリーズ 6)スーパーオキサイドディスムターゼ

SOD(Superoxide dismutase: スーパーオキサイド不均化酵素ー過酸化水素と酸素に不均化する酵素)は、生物が酸素を使ってエネルギーを生み出すために必要な酵素の一つです。必要な酵素といってもエネルギーを生み出すことに直接関与する訳ではありません。生物がエネルギーを作る仕組みを通してSODの役割をご紹介します。

 

人間も含め地球上の多くの生物は酸素がないと生存できません。それは、生物が生きていくためのエネルギー生産に必要だからです。真核生物にはミトコンドリアと呼ばれるオルガネラ(細胞小器官)があり、真核生物が生存するために欠かせないエネルギーを生産する場所となっています。ミトコンドリアには外膜と内膜があり、内膜にエネルギーを産生するための仕組みがあります。細胞はグルコースを取り込んで細胞内の解糖系によってピルビン酸に変換します。これは嫌気性の反応で、その際に2分子のATP(アデノシン三リン酸)が作られます。また、呼吸によって取り込まれた酸素と生じたピルビン酸は反応してアセチル-CoAとなり、ミトコンドリアのクエン酸回路の流れに入り込んでいきます。その過程でクエン酸やシスアコニット酸、イソクエン酸、α―ケトグルタル酸、スクシニル―CoA、コハク酸、フマル酸、リンゴ酸、オキサロ酢酸を経て、再びクエン酸となります。その間に2分子のATPが作られます。このクエン酸回路が回る過程でNADH(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド/還元型)とFADH(フラビンアデニンジヌクレオチド/還元型)という補酵素が生産されます。これらの補酵素はミトコンドリア内膜上に存在する電子伝達系に電子を渡し、生じたユビキノン(Q)の還元体であるユビキノール(QH2)からチトクロームCに電子が流れることでチトクロームCが還元され、それが複合体IVで酸化されて電子が酸素に渡されることにより、水が生じます。これらの工程により内膜と外膜の間のプロトン濃度が上昇していきます。この膜間腔と内膜側のプロトンの濃度勾配により、プロトンはATP Synthase(ATP合成酵素)を通って内膜側に流れ込むことによって34分子のATPが作られます。

 

 この電子伝達系からは、漏れ出した電子によって酸素が一電子還元され、活性酸素種であるスーパーオキサイドが発生します。スーパーオキサイドは極めて反応性が高く、遺伝子や近くのタンパクを攻撃し損傷を引き起こします。生体のスーパーオキサイドの約90%程度はミトコンドリアで生じるとされています。それらスーパーオキサイドは、スーパーオキサイドディスムターゼ(SOD-I、SOD-II)により活性の低い過酸化水素と酸素に分解されることにより、遺伝子やタンパクをスーパーオキサイドから守ります。生じた過酸化水素はGPx(グルタチオンペルオキシダーゼ)やPRX(ペルオキシレドキシン)によって水に変換されます。このような仕組みを持つことにより、真核細胞は活性の高い酸素を利用することができ大量のエネルギーを生産するシステムを確立することができたと言えます。なお、ミトコンドリアは真核細胞にα-プロテオバクテリアが入り込んで共生関係になって高機能化したものと考えられています。

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​参考資料

福岡大学講義資料

JT生命史研究館

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