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量子化学計算によるポリフェノールの抗酸化作用の予測

18 時間前
読了時間: 3分

1.はじめに

量子化学計算では、分子構造を与えるだけで分子軌道や各種分子の特性を計算し、予測することができます。本事例では食品分野向けの解析例として、代表的なポリフェノールの抗酸化作用の予測を量子化学計算で計算できる各種数値から解析し、計算による各分子の抗酸化作用の予測について検討しました。


図1 ケルセチンのHOMO軌道
図1 ケルセチンのHOMO軌道

2.抗酸化作用の主な機構


抗酸化作用は、以下のような機構で起こると考えられます。


 ArOH → ArO・ + H・


ポリフェノールの-OH基から水素が離脱し、ラジカルが生成する過程の起こりやすさを評価すれば、抗酸化作用の評価が可能と考えられます。今回の解析では、ポリフェノールからのラジカル生成に関係する以下の3つの計算を行い、DPPH IC50の値(文献値)と比較しました。

① HOMO準位

HOMO準位が高いと電子を供与しやすいため、ラジカルが生成しやすいと考えられます。


② BDE(結合解離エネルギー)

ポリフェノールが水素ラジカルを生成する際の結合解離エネルギー(BDE)が小さい場合、ラジカルが生成しやすいと予測されます。


③ スピン密度分布の広がり(ラジカルの安定度)

生成したラジカルのスピン密度を評価し、その広がりによってラジカルの安定度を評価します。


3.計算結果

表1 量子化学計算の結果とDPPH IC50(μM)実測値との比較

化合物

HOMO (eV)

BDE (kcal/mol)

スピン密度分布

DPPH IC50 (μM)※

没食子酸

-6.22

78.70

2.748

5.2

ケルセチン

-5.26

72.78

3.089

8.4

エラグ酸

-6.05

81.10

2.851

9.8

カテキン

-5.40

85.49

2.133

12.7

カフェ酸

-5.98

75.05

2.436

14.8

レスベラトロール

-5.82

80.82

1.765

18.3

フェルラ酸

-6.13

77.78

2.383

22.5

図2 スピン密度分布とDPPHの相関性
図2 スピン密度分布とDPPHの相関性

文献等でよく述べられているHOMO準位やBDEの評価では、DPPHでの抗酸化作用と相関性が低く、単独では、抗酸化作用自体の予測は難しいという結果になりました。一方でラジカルの安定度を評価したスピン密度分布は、DPPHとの相関性がよくある程度の抗酸化作用を評価できると考えられます。ただし、スピン密度分布の評価も没食子酸の強い抗酸化作用は予測できないなど、完全な予測はできず、他の要素と組み合わせて複合的に評価する必要があると考えられます。


ケルセチン
ケルセチン
没食子酸
没食子酸
カテキン
カテキン

図2 スピン密度の計算結果の例

(ケルセチンや没食子酸は、広く分布しているのに対し、カテキンは局在化している様子が分かる。)


4.まとめ

 今回は食品分野向けの解析事例としてポリフェノールの抗酸化作用を取り上げました。量子化学計算でポリフェノールの抗酸化作用に関連していると予測されている3つの特性について計算し、DPPH IC50の測定値と比較しました。その結果、ラジカルの安定性と関係のあるスピン密度分布は相関係数が0.67と相関性が高く、量子化学計算で抗酸化能の予測ができる可能性が示されました。

計算科学では、実際の測定を行うことなく様々な予測が可能です。今回は精度が高いものの計算コストが高い量子化学計算を用いましたが、膨大な化合物から特定の化合物を選び出すようなスクリーニングなどが可能な手法や計算モデル数多く存在し、今後様々な用途への展開も期待されます。




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