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水質の指標シリーズーSS(浮遊物質量)

更新日:2022年5月26日

はじめに

水質の評価には、汚れ具合を評価する指標、においの原因物質や汚染物質の量を測る指標、菌の指標など、数多くの指標があります。このシリーズでは水質を分析するための指標についてご紹介して参ります。


浮遊物質量(SS)について

水質を評価する指標としてSS(Suspended solids:浮遊物質量)があります。SSは水の濁りや透明性に関係する指標の一つです。SSに関連する指標としてSSS(Settleable suspended solids:沈降性浮遊物質量)とVSS(Volatile suspended solids:揮発性浮遊物質量)があります。SSはSSS(重量表記の場合)、VSSを含む数値になります。日本では、SSのみが環境基準、排水基準に定められています。因みに濁度の単位1はカオリン(含水ケイ酸アルミニウムが主成分)1 mg/Lに相当します。

河川水や湖沼水には大小色々な物質が入り込んでいます。流木や土砂、木片、プラスチック、紙、葉っぱ、生物断片、生物の排泄物、プランクトンや菌、生物の代謝物、排水由来の物質、溶出物など、たくさんの物質が漂っています。SSはこれらの一部を対象としています。一般的に2 mmの篩(ふるい)を通り、孔径約1μmのろ紙上に残る物質がSSの対象となります。孔径1μmのろ紙を通過する成分は溶解性SS(または溶存態)としていますが、厳密に区別されている訳ではありません。溶解性SSにも1μm以下の懸濁物も含まれます。SS測定用ろ紙にはガラス製ろ紙(Glass fiber filter paper:GFP)と限外ろ過膜(Membrane filter:MF)が用いられますが、 河川水などの公共用水のSS測定にはガラス製ろ紙を用いるように規定されています(昭和46.12.28環境庁告示第59号付表9)。それぞれのフィルターには長所短所があり、GFPはサイズ分離ではMFよりも劣りますが、目詰まりしにくいのでサンプル水の通りが良く、MFはサイズ分離がよく一定の大きさ以上の物質は排除されますが、目詰まりしやすく、サンプルによってはろ過が難しい場合があります。JIS法K0102ではGFPとMFの両方が記載されています。

SSの測定方法

1)ガラス製ろ紙(GFP)を105~110℃で2時間乾燥し、放冷後、その重さを測ります。

2)2 mmの篩(ふるい)を通したサンプルを孔径約1μmのGFPを通します。

3)GFPを105~110℃で2時間乾燥し、放冷後、重さを測定します。

4)ろ過乾燥したGFPとろ過前のGFP重量の差からSS値を求めます。

普通の河川では、SSは数十mg/L程度です。汚染のない河川のSS値は、一般的に25 mg/L以下で、河川項目類型ではAA~Bに当ります。Cでは50 mg/L、Dでは100 mg/L以下と基準値が定められています。大量の降水で一時的に濁った水の場合は幅がありますがSSは500~5,000 mg/L程度です。一律排水基準においては、SSの許容限度は200 mg/L(日間平均150 mg/L)とされています。

SSSは一定時間静置したサンプル水の上澄のSSを全SSから差し引いた値です。大雨による出水時や河川工事における沈降性浮遊物質の量を知ることは、ダムの堆砂量の見積もりや、流れ込む湖沼の管理に重要です。SSSは一定時間静置した上澄のサンプル水中のSSを全SSから差し引くことで求められます。また、VSSはSSを測定したろ紙を600℃で加熱した後の重量を測定し、その減少量から求めます。減少量は一般にろ過物に付着している有機化合物の量にあたりますので、排水の状態を知ることができ、濁りの由来などを推定することができます。

参考資料)

浮遊物質量(国土交通省): https://www.mlit.go.jp/river/shishin_guideline/kasen/suishitsu/pdf/s04.pdf

河川における浮遊物質量(SS)と濁度の関係(国土技術政策研究所): http://www.nilim.go.jp/lab/bcg/siryou/tnn/tnn0594pdf/ks059410.pdf

浮遊物質量測定法(環境省):https://www.env.go.jp/kijun/wt_a09.html

河川項目類型(環境省別表2):https://www.env.go.jp/kijun/wt2-1-1.html

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