はじめに
水質の評価には、汚れ具合を評価する指標、においの原因物質や汚染物質の量を測る指標、菌の指標など、数多くの指標があります。このシリーズでは水質を分析するための指標についてご紹介して参ります。
ジェオスミン、2-メチルイソボルネオールについて
聞きなれない化合物名かと思いますが、ジェオスミン(ゲオスミン:geosmin)と2-メチルイソボルネオール(2-Methylisoborneol)は水道水などの飲料水の分析項目です。ジェオスミンは藻類や放線菌が作り出す化合物で、泥臭さ(どぶ臭さ)の原因となる物質、2-メチルイソボルネオールは藻類が作り出す化合物で藻類が繁殖した水槽の臭いに関わる物質です。いずれも、不快なにおいで私達が感知できる濃度も極めて低いことが分かっています。熊本市は地下水を原水として用いているので、まず検出されることはありませんが、河川水や湖沼水を原水にしている場合は、季節によって臭いが強くなることがあり、水道水に対する苦情の原因物質です。構造式で示すように、環状炭化水素構造の三級アルコールです。ジェオスミン、2-メチルイソボルネオールに不快な臭いを感じるのは何か理由があることかと思われますが、とくに強い毒性があるとの情報はないようです。臭いの閾値が低い化合物には、トリエチルアミン、n-吉草酸、酪酸などがありますが、ジェオスミンはそれらよりもさらに低く、0.0065 ppmとのデータがあります。くさい物質の代表格であるメチルメルカプタンは0.07 ppmなので、ジェオスミンはその1/10程度の濃度でも臭気を感じることができるということです。ただ、においの閾値は人や環境、状況、他の臭気成分の混在などによって大きく変化しますので、誰もが常に閾値以上で臭いを感じるわけではありません。
ジェオスミン、2-メチルイソボルネオール分析法
ジェオスミンと2-メチルイソボルネオールの水質基準値はいずれも10 ng/L(0.01 ppm)で、定量下限値はその1/10の1 ng/L(0.001 ppm)とされています。高感度な測定が求められるため、PT-GC/MS(パージトラップガスクロマトグラフ質量分析法)、HS-GC/MS(ヘッドスーペースガスクロマトグラフ質量分析法)、SP-GC/MS(固相抽出ガスクロマトグラフ質量分析法)などの分析法が使用されています。
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