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身近な環境問題について考える    ~水辺の悪臭~

  • 6 時間前
  • 読了時間: 8分

目次

1.      はじめに

2.      悪臭とは



日常生活で不快な臭いを感じたことはありませんか。「ヘドロ臭」「腐卵臭」「アンモニア臭」「たばこ臭」など個人差はあるものの一度は感じたことがあるニオイではないでしょうか。

ニオイには何かしらの原因物質と発生源があります。ニオイを感じる成分は低濃度で多成分が関係することも多いため、悪臭の原因物質と発生源を特定することは困難とされています。

本コラムでは水辺の悪臭がなぜ発生するのかを理論的に解説します。その発生源と対策について、皆さんが考え、行動するきっかけとなればと考えております。

また弊社では悪臭の原因調査も行っております。こちらの活用も是非ご検討いただけますと幸いです。 


悪臭とは人が不快と感じる臭いと定義されています。そのため、人が居ない場所、即ち人が臭いを感じない場所では悪臭問題は発生しないと言い換えられます。対して、人が居る場所は必然的に人の手が加わっている環境(インフラ整備あり)のため、生活圏における悪臭問題のほぼ100%が人為的要因であると考えられます。

悪臭は環境基本法第2条で公害として定めらており、昭和46年に制定された悪臭防止法では、現在、表1で示す22物質を特定悪臭物質に指定し、規制基準を設けています。

一方で、特定悪臭物質の対象範囲は「都道府県知事(または市長)が指定した規制地域内にあるすべての工場その他の事業場の事業活動」としているため、住民の生活排水についてはその限りではありません。規制がない(但し、環境負荷軽減の責務はある)一般家庭の生活排水は後述するデータからも汚濁負荷量が最も大きいため、身近な悪臭問題の最大要因となる可能性を秘めていると言えるでしょう。


表1.特定悪臭物質一覧

特定悪臭物質名と臭気の質を並べた表。アンモニア、メチルメルカプタンなどの4大悪臭と呼ばれる物質もある。


今回は生活排水が流入する可能性のある用水路や河川などの公共用水域の悪臭問題ついて考えていきます。主な悪臭原因としては以下の4点が考えられます。


①   生活排水(油・洗剤・食べ残し)による有機物の増加

②   水の滞留による酸素不足

③   工場・農業排水の影響

④   富栄養化(藻の大量発生と微生物の腐敗)


それぞれの原因から発生する悪臭の経路について、代表例を表2に示します。


表2.悪臭原因と発生経路

悪臭とその発生経路を悪臭物質やニオイの種類毎に一覧表にまとめています。
脂質や糖質の分解過程で複数の悪臭物質が発生している。
図1.脂質・糖質の分解過程及びメタン発酵

①   生活排水が原因となる際、共通して嫌気性環境下であることがポイントです。【例1】では硫黄を含む有機物の加水分解の過程で硫化水素が発生し、【例2】では硫酸塩還元菌が有機物を分解する過程で硫酸イオンが還元され硫化水素を発生します。

また、【例3】では、生物の死骸などタンパク質やアミノ酸を含む有機窒素化合物が微生物によって分解される過程でアンモニアを発生させます。


②   ①のポイントであった嫌気性環境は水の滞留による酸素不足に起因しています。表3に水の滞留要因を示しております。屋内環境おいても屋外環境においてもありふれた要因で水が滞留していることが想像できます。水が滞留する箇所では悪臭が発生する条件が整っているので注意が必要です。


表3.屋内外における水の滞留要因一覧

屋内外における水の滞留要因の表。見出しは「屋内環境(台所・風呂・トイレなど)」「屋外環境(側溝・排水路・下水)」で、物理的詰まりなどの項目が並ぶ。

③   工場・農業排水が原因となる際も、嫌気性環境下で悪臭が発生する場合があります。脂質や糖質などの生分解性高分子有機物が水環境へ排出されると、好気性環境下では加水分解酵素により低分子有機物へ分解され、溶存酸素を消費され次第に嫌気性環境下(pH5~6程度)となると酸生成菌により揮発性脂肪酸へ分解されます。その後、酢酸生成菌により酢酸へ分解されると最終的にpH7前後の嫌気性環境下でメタン生成菌によりメタンを発生させます。これが「メタン発酵」と呼ばれるプロセスです【例4】【例5】。このプロセスにおいて、酸生成スピードがメタン生成スピードを上回ると揮発性脂肪酸が未分解状態で残存し悪臭を放ちます。揮発性脂肪酸の生成量が多いと急激に酸性化となり、メタン生成菌の分解を阻害し、揮発性脂肪酸の残存を助長します。また、pH5~7の酸性条件下はタンパク質が微生物により分解されやすい環境であり、アミノ酸を多く含む動物性タンパク質が流入するとアミン類へ分解されます。


④   栄養塩(窒素、リン)の増加による富栄養化となった水環境では、アオコ(藍藻類)や植物プランクトンが大量発生し、寿命を迎えると死滅し有機物として1)~5)の分解過程で悪臭物質を発生します。図2に富栄養化の概念図を示す。1)好気性環境下では有機物がアンモニアや有機酸に分解され、2)分解過程で溶存酸素が消費されると次第に嫌気性環境となると、【例2】と同様に臭化水素が発生します。3)水底に沈降し堆積した有機物や有機酸は【例4】と同様にメタン発酵によりメタンを発生します。また、5)有機硫黄化合物を含む有機物は微生物のはたらきにより生ごみ臭の原因物質であるジメチルスルフィドに分解されたり、微生物の代謝活動によりカビ臭の原因物質であるジェオスミンが生成されたりします。 


栄養塩増加による富栄養化の図。左に健全な生態系、右に富栄養化の概念図、左に悪臭発生までの段階的なプロセスを記載。

図2.富栄養化の概念図/引用元:https://ocean.nowpap3.go.jp/page-334/page-568/

 

いずれの悪臭経路も人間が排出した物質と、微生物のはたらきが関係し、悪臭物質を生成していると言えるでしょう。



表2の悪臭原因からも分かるように悪臭を発生させないためには、悪臭発生プロセス順に上流側からの対策が重要となります。


【悪臭対策のポイント】

ステップ1:原因物質を排出しない、流入させない ≪有機物の削減≫

ステップ2:嫌気環境をつくらない ≪酸素供給≫

ステップ3:自然の浄化力を高める、原因物質を排除する ≪適切な栄養塩類≫


しかしながら、それぞれの対策には課題もあります。


課題1:不特定多数の外的要因が混在するため単一の対策では不十分となる

課題2:嫌気環境が地形や都市構造が原因の場合、抜本的な構造改善が難しいこと

課題3:原因物質を排除するためのインフラ整備(下水道、浄化施設など)にコストがかかること


上記課題を解決するためにも、悪臭原因の裏付けとなる根拠を正確に捉え、適切な対策を考案することが不可欠と考えています。原因を見誤ると見当違いな対策や完全に巨額な費用を費やすことになりかねません。そのため、正しい原因の調査や分析が重要となります。



悪臭原因物質には直接的に分析できるものや指標を使って間接的に評価するものがあり、これらを使って水質レベルや悪臭の要因を可視化・評価することができます。表4は環境基本法(環境基準)や水質汚濁防止法(排水基準)で定められた規定物質の一覧です。弊社ではこれらの物質をモニタリング調査することで環境改善活動に携わっています。


表4.環境基準及び排水基準の規定物質一覧

環境基準と排水基準の規定物質を表記。生活環境に係る項目、人の健康の保護に係る有害物質が表示されている。

河川調査の採水の様子。

図3.河川水質調査の採水状況写真


弊社で行う調査として「異常原因調査」というものがあります。異常原因調査とはその名の通り、異常事態が発生した際にその発生源や原因を特定し異常改善に役立てていただくための調査・分析業務です。その調査の一部をご紹介します。

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 【公共用水域の悪臭調査提案内容(事例)】

 <調査目的>

 ■悪臭の原因となる油脂や脂肪酸塩の供給源を特定する。

 ■悪臭発生現場での発生プロセスを明確にし、問題点を改善する。

 <試料採取場所>

 ■水質試料:流入排水、発生現場流入水、発生現場流出水

 ■底質試料:発生現場の堆積物

 <調査内容>

 ■油脂、脂肪酸塩の発生源の確認

 ■脂質や脂肪酸塩の構成を確認

 ■悪臭発生プロセスの確認

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調査案件ごとに適切な調査内容を提案し実施することで、最終的に発生源と原因を絞り込みます。しかし、複合的な発生源や外的要因(生活排水、工場排水の流入や自然要因など)があることが常のため、その原因を特定すること、改善することは難しい案件でもあります。

困難な悪臭問題解決の一歩を踏み出すためにも、正確な分析データに裏付けられた根拠と原因の特定が調査機関に求められます。

正確な分析データをご提供するために調査機関が発行する計量証明書は環境計量士の有資格者の発行に限定されます。その理由は以下の通りです。

(1) 計量証明書は「社会的・法的効力」を持つため

(2)専門知識が不可欠なため

(3) 不正・ミス防止のための責任を明確化するため

(4)法律(計量法)で定められているため

2026年6月現在、計量証明事業登録機関(第44号)として必須の国家資格である環境計量士6名を含む21名の社員(現在)が定期水質調査や異常原因調査に務めています。悪臭以外でも環境問題に関わる困りごとはお気軽にご相談下さい。


悪臭対策は家庭・地域・行政の3つのレベルで整理して考え、個々人で何ができるか理解し行動することも重要です。表5にそれぞれの対策例を記しております。


表5.悪臭原因と家庭、地域、行政・企業にできる対策例一覧

悪臭原因と対策を家庭、地域、行政・企業の3つのレベルで表記。水の汚れ、酸素不足、富栄養化と微生物の腐敗に対し、汚れを入れない・水の流れを良くする・自然の浄化力を高めると書かれている。

一般的に家庭でできる対策は極めて有効であり、根本的な改善には行政・企業レベルの対策が必要とされています。家庭でできる対策が極めて有効な理由については下記の通りです。

【家庭でできる対策が極めて有効な理由】

■水質汚濁・悪臭は生活排水の影響が大きい

 ・ 汚濁負荷量(量)が大きい 

 ・ 都心部以外では未処理・不十分処理が多い

 ・ 有機汚濁成分が多い

 ・ 工場排水は既に規制されている

■汚濁負荷量の割合

 生活排水: 約50%〜70%

 産業(工業)排水: 約20%〜30%

 その他(畜産・農地など): 約10%〜20%

■BOD負荷:約40g/人・日程度

 全国で未だに約780万人が汚水処理施設を利用できない状況(約312 t/日)


生活排水は水質汚濁の大きな割合を占めるため、家庭や地域(自治会など)レベルで一人一人が改善活動すると悪臭対策の効果が大きいと言えます。


最後までお読みいただき有り難うございます。

悪臭問題に対する改善活動の一歩を踏み出す一助となりましたら幸甚です。

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