水質の指標シリーズ5)

 

​全有機炭素(TOC)

 

 TOCは、酸化を受ける炭素含有有機物量を表す指標です。有機物を測る方法としては、これまでにご紹介した化学的酸素要求量(COD)、生物化学的酸素要求量(BOD)があります。CODは有機物の二酸化マンガンによる酸化、BODは微生物による酸化量を指標にしたものですが、TOCは燃焼によって生じる二酸化炭素量を測定するもので、その名のとおり、基本的にはすべての有機炭素を計測できる方法になります。河川水はBODを、湖沼や海水はCODを、水道水はTOCによる分析が規定されています。そのほか、製薬調製用の水もTOCの測定が定められています。

 TOCを測定するための有機化合物の酸化法には、燃焼法と湿式酸化法の二つがあります。燃焼法では、白金触媒を充填した管を680℃に加熱し、それにサンプルを空気や酸素と一緒に通し、炭素を二酸化炭素に変換させ、水蒸気を除いた後に赤外線ガス分析計(NDIR*:Non Dispersive Infrared-非分散型赤外線法)で測定します。これにより、全炭素量(Total Carbon:TC)を測定することができます。無機炭素(Inorganic Carbon:IC)の場合は、酸を加え二酸化炭素に変換して測定します。湿式酸化法は、酸化剤としてペルオキソ硫酸ナトリウムを用い、紫外線照射と加熱を併せて酸化を行い、発生した二酸化炭素を赤外線ガス分析計で測定することにより全炭素量を測定します。

 測定には不揮発性有機炭素(NPOC:Non-Purgeable Organic Carbon)法、TC—IC(Total Carbon—Inorganic Carbon)法があります。NPOC法は不揮発性有機炭素を対照とした測定方法で、サンプルを最初にpH3以下の酸性とし、ICの主要な化合物である炭酸カルシウムや炭酸マグネシウムを炭酸に変えて通気することでサンプルから除去し、それを用いてTOCの測定に用いる方法です。通気によって揮発性有機炭素(POC:Purgeable Organic Carbon)は除かれますので、不揮発性有機炭素法と呼ばれています。TC—IC法は、その名前どおりTCとICを測定し、TCからICを差し引いてTOCを求める方法です(図を参照ください)。ICがTCに比べて非常に多い場合、つまり無機炭素が多く含まれるサンプルに対してはTC—IC法ではTOCの精度が低くなりますので、NPOC法での測定が一般的です。また、POCが多いサンプルの場合は、TC-IC法での測定が行われます。飲料水はNPOC法で測定されています。なお、装置にはNPOC法とTC—IC法に対応できるシステムが通常組み込まれています。従って、装置の内部は燃焼装置や通気のためのシリンダー内バブリング機構など、かなり複雑な構造になっています。

 

 *NDIR:二酸化炭素は温室効果ガスとして知られていますが、赤外領域全般に吸収があるわけではありません。赤外線領域において二酸化炭素が赤外光を吸収する波長域と吸収しない波長域があります。吸収のない振動数域(2,600~3,000 cm-1)を対照として、二酸化炭素によって吸収される振動数域(2,320~2,330 cm-1)の赤外光の量を求めると二酸化炭素濃度が分かります。この方法は、選択性が高いこと、他の成分の妨害を受けにくいため、TOC装置には欠かせない検出方法となっています。

全有機炭素測定装置