はじめに
熊本市上下水道局のホームページには、水道施設紹介として熊本市の水道施設の場所が地図上に表示されています。江津湖周辺や立田山の北西方向に数多くの取水施設があることが分かります(参考情報 熊本市上下水道局HP:https://www.kumamoto-waterworks.jp/waterworks_article/1218/
)「水前寺江津湖湧水群」は「平成の名水百選」にも選出された水道水源で、熊本市は、水道水をすべて地下水でまかなう都市の人口規模が日本一であり、「日本一の地下水都市」とされています。熊本地域の地下水の仕組みは、阿蘇火山による壮大な自然のシステムと、人の営みのシステムが、絶妙に組み合わさったシステムです。今回は、豊富で良質な地下水誕生の仕組みについてご紹介します。
地下水誕生のメカニズム
熊本地域、阿蘇地域の地下水は、自然の営み(火山による地下構造の形成)と人の営み(水田開拓)によってでき上がっているといえます。阿蘇山の火山活動によってできた100メートル以上の厚さの積層構造体の下に水を通しにくい岩盤があって地下水として貯留できることに加え、熊本阿蘇周辺に降る雨の量は年間約2,000 mmで、阿蘇の外輪山に降った雨水は地下を20年ほどかけて流れ、熊本市内の水前寺公園や江津湖の湖水として地上に姿を現します。地表の水の流れはまた、阿蘇のカルデラを通って熊本平野を流れる白川の水を灌漑用水として利用するための用水路の構築により、水田に導かれ地下に浸透することによって、更に涵養されることになります。白川の治水工事は加藤清正の時代に行われたとされており、作られた用水路(井手)は水田耕作地を広げるのに大きな役割を果たしました。また、地下水の一部は、マグマで熱せられた岩盤や、マグマからの高圧高温ガスと混じりあうことにより加熱され温泉水として人々の営みに活用されます。阿蘇山の恵みの一つです。
地下水の流れ
阿蘇や熊本地域に降った雨の約30%は地下水となり、浸透しやすい砂礫層を通り、阿蘇くまもと空港の北東地域の地下に広がる大きな地下水プールに流れ込みます。その地下水プールは、田園などへ引かれた水が浸透して量を増やします。地下水プールの水は、小山、戸島山下の岩盤を廻り込むように市内地下へと流れていきます。熊本市内には113本の井戸があり、熊本市動植物園近くの健軍水源地の5号井の湧出量は一日に16,000トンで、水道水として市民に供給されています。熊本市の水道は、1924年11月に八景水谷水源を使って供給されたのが最初ですので、もうじき100年を迎えます。
地下水の課題
潤沢に使えると思っている地下水ですが、減反や舗装の広がりなどにより地下へ浸透する水量が少なくなったこともあって、地下水位の低下が観察されていました。また、一部の観測地点で硝酸性窒素濃度の上昇がみられるとの報告があります。大切な地下水資源を守るために関連する市町村が一体となった保全の取組も行われていることもあり、地下水位については改善の方向に向かっています。硝酸性窒素については、生活排水や家畜の排せつ物等の適切な処理が進むことで低下する方向に向かうことが期待されています。汚染を抑え、この豊かな地下水を永続的に将来の資源として使用できるように取り組んでいくことが求められます。
参考情報
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