脂肪酸について

 

 脂質や脂肪酸と聞くと、体への脂肪蓄積⇒体重増加⇒肥満、がイメージされると思います。また、さらに動脈硬化や循環器系障害などをイメージされる方が多いのではと思います。健康診断の脂質代謝の項目の一つ、中性脂肪値を思い出す方もいらっしゃるかもしれません。あまり、いいイメージのない脂質ですが、体にとってはタンパク質や炭水化物と並んで必須の栄養素です。脂質は細胞膜形成やホルモンの合成に必要です。食品中の油脂は一般的に中性脂肪(トリグリセリド:TG)であり、TGは生体において脂肪細胞などに蓄えられ、必要に応じてエネルギー生産に使われています。脂質1 gは体内で9,000カロリーのエネルギーを生み出します。単純に言えば、脂質1 gのエネルギーで1リットルの水の温度を9℃上げることができることになります。

 料理に使う食用油には色々な種類があります。菜種油、ごま油、オリーブオイルなどは代表的な食用油です。健康志向の高まりを受けて、脂肪が付きにくいことや、コレステロールフリーを謳ったオイルも販売されています。ただ、重量あたりのカロリーは基本的に同じなので、残念ながら低カロリーのオイルは存在しません。よく使用されるキャノーラ油は品種改良された菜種油で、それまでの菜種油には、取りすぎによる循環器系障害を起こす一価不飽和脂肪酸のエルカ酸が含まれていました。キャノーラ油にはエルカ酸を含まず、オレイン酸やリノール酸などの一価不飽和脂肪酸が豊富に含まれています。

 さて、TGの成分である脂肪酸には、飽和脂肪酸、一価不飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸があり、飽和脂肪酸は4から22まで、一価不飽和脂肪酸は18、22、多価不飽和脂肪酸は18から22までの偶数個の炭素で構成されています。不飽和二重結合は、エライジン酸のみがトランス体で、それ以外はシス体です。同じ炭素数の脂肪酸でも、飽和と不飽和の違いは集合体の結晶性に大きく関与し油脂の性質に反映されます。動物は飽和脂肪酸が多く、室温では流動性の低い「脂」ですが、植物の場合は不飽和脂肪酸が多く、一般的に流動性の「油」です。

 細胞膜は二つの脂肪酸がグリセリンに結合し、グリセリンの一つの水酸基がリン酸エステルとなった構造のリン脂質を主な構成成分として形成されています。細胞膜の内側と外側ではリン脂質の組成は異なります。また、細胞膜の流動性は、細胞が機能する上で極めて重要で、多様なリン脂質の組み合わせによって細胞膜の流動性が変化するので、細胞がきちんと機能するようにその組み合わせを制御している仕組みは不思議としか言いようがありません。(細胞膜模式図)