BOD​ 生物化学的酸素要求量とは

水質の指標シリーズ1)

 

BOD(生物化学的酸素要求量)について

 

 BOD、CODという言葉を聞いたことのある方は多いのではないかと思います。水質を表す指標の一つですが、BODはBiochemical Oxygen Demand(生物化学的酸素要求量)、CODはChemical Oxygen Demand(化学的酸素要求量)を意味します。外国で作られた言葉を日本語に直訳しているので、そのままではよく分かりませんね。BOD値は有機物による水の汚れ具合の指標とされています。河川の汚染状態によっては、水源としての適格性や用途の制限などが関わってきます。また、特定の生物が生存できる環境にあるかどうかを知ることにもつながってきます。

 

 BODの測定原理について説明します。水中では魚や水生昆虫などの水生生物や微生物(プランクトン、好気性菌*など)によって酸素が消費されます。微生物も動物と同じように糖や有機酸、タンパク質などの食物を取り込んで酸素を使ってエネルギーを生み出し増殖していきます。そのため、酸素と共に水中で微生物の食物となる有機物が必要です。BODは、この微生物の働きを利用して水中の有機物の質量を測定することにより求められます。有機物が多い水は好気性微生物が繁殖しやすく、水生生物の生存に必要な酸素が消費されていくことで、水生生物が住めなくなる環境になってしまいます。工場排水にもBOD規制値があり、全国一律許容限度は160 mg/L(日間平均120 mg/L)とされています。河川は生活環境の保全に関する環境基準として、BODに加え、pH(水素イオン濃度)、SS(浮遊物質量)、DO(溶存酸素)、大腸菌数により、その水質をAAからEまで区分しています。詳細は環境省のサイトをご覧ください。排水の規制値については、弊社の環境分析サイトの「排水基準」に掲載してあります。

環境省サイト

https://www.env.go.jp/kijun/pdf/wt2-1-1.pdf

同仁グローカル環境分析サイト排水基準

https://www.dojin-glocal.com/environmental-water3

 

 河川水のBODはBOD75という年間統計値で評価されており、測定値を最小値から並べていき、分析回数が100回の場合、100x0.75=75という計算により、75番目の値を採用するという仕組みです。分析回数が30回の場合は22.5となり数値を切り上げて23番目の数値を採用することになります。BODの年間統計値の例として、熊本県の代表的な河川のBOD値が国土交通省九州地方整備局熊本河川国道事務所のサイトでご覧いただけます。年々、BOD値が低下しており、最近ではAからAAの水準で推移しています。

国土交通省九州地方整備局熊本河川国道事務所サイト

http://www.qsr.mlit.go.jp/kumamoto/river/kanri/suishitsu.html

 

 次に、測定の流れをご紹介します。

1)検体を分取します。(ここで希釈を行う場合もあります)

     ※希釈に使用する水は植種希釈水と言い、有機物を分解させるための菌が入っています。

2)温度の調整をします。温度によって酸素量は変わりますので検体を20℃に合わせます。

3)検体に酸素を吹き込んで飽和させます。

4)pHを合わせます。

5)検体をBOD測定範囲に入るように希釈します。

     希釈した検体はそれぞれ、フラン瓶という特殊な形状のガラス瓶(写真)に入れます。

6)1日目の溶存酸素量を測定します。

7)20℃で5日間保存後の溶存酸素量の測定を行い、1日目の溶存酸素量との差と希釈率を

     用いてBOD値を出します。

 

 5日間と設定された理由は、イギリスの河川で水が上流から河口まで流れ下る時間だったからと言われています。初日の溶存酸素量から5日後に測定した残存酸素量を差引し、その値に希釈倍率を掛けると、溶存酸素の変化量を求めることができます。例えば、ある河川の流域で採取された水の初日の溶存酸素値が8.84 mg/L、5日後に8.30 mg/Lとなった場合、BOD値は8.84-8.30=0.54 mg/Lとなります。この試料の希釈倍率が1倍だとすると0.54 x 1 = 0.54 mg/Lとなり、BOD値だけを見ると、この流域の水質はAA(1 mg/L以下)という類型になります。

 

 溶存酸素量の測定方法は、工場排水試験方法に記載されています。ヨウ素滴定法やミラー変法、隔膜電極法、光学式センサー法が適用されるとしています。ヨウ素滴定法では、以下の反応が進行します。滴定により青紫から無色になるために要したチオ硫酸ナトリウムのモル量から酸素量を計算することができます。下にヨウ素滴定法における溶存酸素測定の化学反応式をまとめてみましたのでご覧ください。

 

BOD測定の際の溶存酸素測定の化学反応

1)マンガンによる酸素の固定

MnSO4 + 2NaOH → Mn(OH)2 + Na2SO4

2Mn(OH)2 + O2 → 2MnO(OH)2

2)硫酸とヨウ化カリウム添加による酸素の放出とヨウ素の遊離

MnO(OH)2 + 2KI + 2H2SO4 → MnSO4 + I2 + K2SO4 + 3H2O

3)デンプン添加とチオ硫酸ナトリウムによる滴定

I2(黄色) + デンプン → I2-デンプン包接体(青紫色)

I2 + 2Na2S2O3 → 2NaI + Na2S4O6(無色)

 

 BOD測定での注意点は、微生物による有機物の分解を利用しているため、有機物の量そのものを見ている訳ではなく、含まれる有機物によって、分解しやすいもの、分解しにくいもので値は異なること、また、微生物の活性を阻害するような成分が入っていると溶存酸素量は高くなることがあることを意識しておくことです。特に工場排水のような分析試料では、含まれている成分が日々変化する場合は、値が大きく変動することが考えられます。

 

 次回は、化学的酸素要求量(COD)についてご紹介します。

 

*菌には、偏性好気性菌、微好気性菌、通性嫌気性菌、偏性嫌気性菌など、酸素がないと生育できない菌、低濃度の酸素で生育できる菌、酸素がなくても生育できるが酸素があったほうが生育しやすい菌、酸素があると死滅する菌があります。